兄やん公式ブログ 2

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この逃亡始まって以来初の雨で、もちろん傘なんかは持ってなかった。とりあえず、駅の中で雨宿りがてらに待つことにし、自販機でライターとタバコを買った。兄やんが今まで見たことがない(たばこを吸わなんかったからかもしれないが)、紫色の蝶の絵がパッケージのタバコだった。

そのタバコはかなりきついと感じるようなタバコで、酒やったら、50°くらいはありそうなきつさだった。そして、雨が少しずつ強くなってきて、やることがなかったので、音楽を聞きながら、本を読み、たまに降りてくる人たちを人間ウォッチングしていた。

何時間かして、駅の人も帰り、その後終電が通り、駅にいる人は兄やんだけになった。辺りは暗くて何もなく、雨が降っていたので、大きな声を出してもかき消されるような状態だった。

この数日間、ほとんど声を出すことがなかった兄やんは、相当ストレスがたまっていたので、ここぞとばかりに、真夜中に駅のホームで大声でいろんな歌を歌いまくった。兄やんの好きな曲や、自分で作った曲、思い出の曲などを歌いながら、こころの中で、今までの自分自身に最後の別れを告げた。

もう何10曲歌っただろうか?
さすがに歌い疲れてきたので、ベンチに座り休憩していた。そして、いつの間にかまた眠りについていた・・・。

いつものごとく、寒さで目が覚めると、雨はいくらかマシになり始めて朝になっていた。空港行きのバスが来るまで、かなり時間があったので、また人間ウォッチングをして、時間をつぶした。

おどろいたのが、たいていの人が、車で駅まで送り届けてくれていたことだった。それが田舎だからなのか、雨のせいなのかは分からなかったが、電車通学・通勤したことのなかった兄やんの眼には、新鮮に映った。

そして、ようやく空港行きのバスが来る頃には、小雨になってきていた。一緒に乗る人が数人いたのに若干驚きながらもバスに乗り、またスグに寝てしまった。空港に着いてからも待ち時間が結構あり、とりあえずトイレに行きう○こを済ませた。

そして、ついでにウォークマンを充電し、カバンに入っていたいらないものも始末した。この時に、あのきついタバコも処分した。そして、充電されるまでの間、待合いのイスでぐったりと眠っていた。さすがに寝心地は良くなかったが、外の寒さがなかった分まだマシだった。

しばらくして、充電が完了したので、トイレに取りに戻り、腹が減ってきたので、何かないかと探し始めた。 空港内には、いくらかテナントが入っており、どれにしようか少し迷ったが、ラーメンを食べることにした。

そこでラーメンを食べ、待合いでかなり待っていると、ようやく搭乗の時間になった。タバコとか身分確認された時に面倒なものは処分したので、特に変なものを持ってるわけでもなかったが、検査ゲートを通過するとき、

「ならへんかな~?」

とちょっとドキドキした。

が、もちろん何もなく無事通過した。そして、さらに待っている間ヒマだったのと、もうこれで確実に見つからないだろう、ということで、勝利宣言的な意味と、まだ捜しているテルたちに、「そんなことをしても時間の無駄やぞ」という意味をこめて、もう一度、テルに電話をかけた。

(兄やん)「おう、もう広島を出て、絶対に見つからんところに行くから、もう捜さんでいいぞ」

(テル)「広島を出ても車で捜しにいくわ」

(兄やん)「おいおい、捜しに行く、って俺本州におらんから無駄やぞ」

(テル)「・・・ってことはお前沖縄行く気やろ!?」

(兄やん)「・・・ん、あ、そんなん言われへんよ。もう切るからな!捜すなよ!」

テルの勘の鋭さに、情けなく分かりやすくうろたえてしまい、またしても強引に電話を切ることになった。兄やんは、高校の修学旅行で沖縄をえらく気に入っていたこともあって、勘づかれてしまったようだった。

そして、引き返すこともできないまま、沖縄行きの飛行機に乗り、離陸する瞬間に緊張しながら(飛行機恐い)、離陸が成功したことを確認して、眠りについた。しばらくして、スチュワーデス(当時の言い方)の人に起こされた。

(スチュ)「木村様、もう沖縄に着きましたよ。」

(兄やん)「・・・ん~、あ、はい。」

と寝ぼけ眼で答えた。

周りを見渡すと、もう他の客は降りていて、客は兄やんしかいなかった。疲れのせいか、着陸の衝撃にも気づかず、グッスリと眠っていたようだった。

(スチュ)「木村様、広島空港にお忘れ物があったようですので、こちらから案内するところまで来てもらえますか?」

そう言われ、いろんな意味で「ドキッ!」とした。

確かに空港にいらないものを置いたが、兄やんのものだと気づくわけがない。それに、なんで兄やんの名前を把握してるのか?ということも引っかかった。普通、名前を呼ばずに「お客様」言うて起こすハズではないか?

「ん~、おかしいな~」

それでもまだ頭がハッキリと冴えない状態だったせいか、的確な判断もできずに寝ぼけたまま、怪しみながら首をかしげ、スチュワーデスの言うとおりついて行くと、出口のゲートに警察官一人と、ガタイのええおっさんが2人、こっちを向いて腕組みをして待っていた。

兄やん以外の乗客はもう既に全員降りていたので、この3人は確実に兄やんを待っている、ということが寝ぼけた兄やんにも容易に分かってしまった。

「おいおい~、ウソやろ~?」

と思いながらスチュワーデスの方に目をやると、スーっといなくなっていた。

「あかん、これはもう終わりや」

そう思い、寝起きでボーっとしていたこともあって、逃げることを諦め、そのままそ知らぬ顔で出口のゲートを抜け出ようとした。すると案の定、やはりその3人に道をふさがれ、

「君、木村 尚樹君だね?」

と聞かれ、

「・・・はい」

と元気なく答えた。

答えたというか、兄やんの写真を拡大したFAX用紙を持っていたので、違う、とも言えなかった。すると、

「捜索願いが出てるから。こっちにきてもらうよ」

と言われ、よく、映画の1シーンで犯罪者が空港で警察に逮捕された時のように、おっさん2人に両脇を抱えられ、関係者通路の方へと連れて行かれた・・・。

兄やんには、両脇を捕まれた瞬間から、風景がスローに感じ、逃亡者が捕まった時のような気分を味わいながら、警官とおっさん2人に連れて行かれたのであった・・・。

END・・・?

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